蜂の子はなぜ高級珍味?

かつては日本全国の山間地域のタンパク源として庶民に広く食べられていた蜂の子が、現在では高級珍味となり容易には食べられなくなっています。今回は、蜂の子がなぜ高級珍味になってしまったのかについてご説明します。

昆虫食の衰退と蜂の子の減少

記録に残る日本の昆虫食は江戸時代以降のものになりますが、山間地域を中心に広く庶民の食卓をにぎわしていました。昆虫食は、蜂の子をはじめ蛾やバッタ類など55種類、41都道府県で行われていました。食べ物がなくて昆虫を食べていたのではなく、一般的な食材となっていたのです。時代が下るにつれて交通網や物流が発達し、海産物など他の地域の食材が山奥まで届けられるようになると、その規模は縮小していきます。第2次世界大戦中の食糧難の時代に昆虫が多く食べられるようになりましたが、戦後、経済状況の変化により昆虫食の習慣も衰えていきます。経済の発展は自然環境の破壊をもたらし、蜂の子をはじめとする昆虫の生息地域を狭め、豊かな自然を維持している一部地域に限られるようになりました。そのため、伝統的な食として残ってはいますが、量的には大きく減少しているため、日常的な食品から特殊な嗜好品へと変わってしまいました。

希少性の高い高級珍味になった蜂の子

最近では蜂の子の豊富な栄養が注目を集め需要が拡大しています。健康効果が高いことから手軽に摂れるサプリメントなどにも利用されるようになりました。しかし、食用やサプリメントとして蜂の子の需要が高まったからといって大量生産できるものではありません。蜂の子を採取できるようにするためには、飼育や生育環境の整備・保全が必要です。人の利便性を高めるために破壊された自然環境の再整備には時間がかかります。飽食の時代となり、様々な食品に目が向けられるようになっても、自然の生み出す蜂の子などの天然の食品には限りがあります。そのため、希少性の高い高級珍味となっています。

昆虫食の衰退した現在の日本では、蜂の子は限られた地域でしか採取できない希少な高級珍味となっています。国連食糧農業機関では、将来の世界的な食糧難の時代への備えとして昆虫食が推奨されています。その一環として、日本でも蜂の子の飼育・生育環境が整備されることを期待したいと思います。